「うちは学習塾だけど、事務員や送迎ドライバーまでチェックが必要なの?」
日本版DBSの導入にあたり、経営者が直面する最大のハードルが、この「照会対象者の選定」です。
2025年12月の最新ガイドライン案に基づき、職種名ではなく「業務の実態」から判断する4つの重要要素を解説します。
判断の核となる「3つのリスク特性」と業務実態
犯罪事実確認(照会)の対象となる従事者は「教員等」と定義されています。
この「教員等」に該当するかどうかは、単なる職種名ではなく、その業務の実態が「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件をすべて満たすかどうかで判断されます。
ガイドライン案で示されている3要件の具体的な解釈は、以下の通りです。
支配性
・業務上、児童等と接する中で、指導、コミュニケーション等を通じて、優越的立場に立つ機会が想定される場合には、支配性があるものとして判断すること。
・従事者と児童等が、日々顔を合わせ、会話等を不定期に行うのみであっても、成人とこどもという関係上、自然と支配性は生じ得るものであるため、業務の中で児童等と接する機会が継続的にある場合には、原則として、支配性があるものとして判断すること。
継続性
・日常的、定期的、その他継続性をもって(不定期であっても反復継続が見込まれる場合など)児童等と接する機会が想定される業務や、法律に明記されている教諭、保育士等のように一般的に継続性をもって児童等に接することが想定されている業務については、(短期・長期の従事であるか否かにかかわらず、)継続性があるものとして判断すること。
・年に1回のイベント講師や、緊急時に突発的に接する場合など、児童等との接触が一時的であるものは、継続性がないと判断し得ること。
閉鎖性
・他の職員や保護者等が同席しないなど、第三者の目に触れない状況で児童等と接する(※)機会が生じ得る場合(従事者一人に対して児童等が複数の場合を含む。)には、閉鎖性があるものとして判断すること。
・ 一方、災害、急な事故などにより、突発的かつ一時的に閉鎖環境が発生するものは、閉鎖性がないと判断し得ること。
※ SNS やコミュニケーションアプリ等を通じたオンラインでの接触も含む(録画配信など児童等とのやりとりが生じないものは除く。)。
自社のスタッフが「教員等」に該当するか判定する
冒頭でも触れましたが、事業者が「犯罪事実確認(照会)」を行うべき対象者は、「教員等」です。
この「教員等」に該当するかどうかは、単なる職種名ではなく、「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件をすべて満たす業務に従事しているかで判断します。
ガイドライン案に基づき、判定の基準を「職種全体が対象となるもの」と「業務実態により判断が分かれるもの」の2段階に分けて解説します。
「職種全体」が照会対象となるケース
業務の性質上、常に3要件(支配性・継続性・閉鎖性)をすべて満たすことが予定されている職種です。
雇用形態にかかわらず、原則として全員が照会対象となります。
教員・講師・保育士・指導員・コーチ等
こどもを教え、導く立場(支配性)であり、定期的な授業(継続性)を教室等(閉鎖性)で行うため、一律に対象となります。
施設長・園長・教室長
現場を統括し、こどもを監護する責任(支配性)があるため、直接教える機会が少なくても対象に含まれます。
「職種の一部」が照会対象となるケース(実態判断)
ここが経営判断の分かれ目となります。
同じ職種名でも、「実際の業務動線や役割」によって対象かどうかが分かれるグループです。
送迎バス運転手・添乗員
車内という閉鎖的な空間でこどもを監護し、日常的に接する場合は対象。
常に複数名で運行し、二人きりになるリスクが完全に排除されている場合は除外の検討余地があります。
事務職員・受付スタッフ
受付だけでなく、自習室の見守り、トイレ誘導、着替え補助など、こどもを監護する場面や死角での対応がある場合は対象。
窓口業務のみなら対象外です。
清掃・調理・警備スタッフ
こどもが活動している時間帯に作業し、挨拶や会話が日常的に発生するなど「対面的な接点」がある場合は対象。
接触が一切ない時間帯の作業なら対象外です。
外部委託・実習生等
委託先の清掃員や教育実習生であっても、現場でこどもと対面的・継続的に接する業務に従事する場合は、職員と同様に対象となります。
ここまで見てきた通り、ガイドライン案では具体的な職種が例示されています。
しかし、実際の現場では「完全に白か黒か」を判断しにくいケースも多いのが実情です。
ここで事業者に求められるのは、「なぜその人を対象にしたのか(あるいはしなかったのか)」という判断の一貫性です。
ガイドライン案でも、事業者が実態に応じて適切に判断することが前提とされています。
万が一、対象から除外していたスタッフが問題を起こした際、その判断に合理的な理由(3要件に照らした明確な根拠)がなければ、事業者としての管理体制や安全管理措置の妥当性が厳しく問われることになります。
したがって、この記事でご紹介した分類はあくまで一般的な「参考例」として捉えていただく必要があります。
詳細については、各施設の動線やシフト体制、業務の割り振りによって結論が異なるため、実務上の最終判断にあたっては、個別の実態に基づいた慎重な精査が不可欠です。
当事務所では、この「誰を対象にすべきか」という初期段階のコンサルティングから、判定根拠を明確にする「対象者判定シート」の作成まで、最新のガイドラインに基づいた実務サポートを行っております。
まとめ
日本版DBSの対応は、単に書類を出すことではなく、「自社のリスクを正しく把握し、管理すること」から始まります。
まずは、現在のスタッフの皆様の業務内容を、3要件(支配性・継続性・閉鎖性)という新しい物差しで一度見直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
