わが社は日本版DBSの対象?「義務」と「認定」の線引き

2026年の「こども性暴力防止法(日本版DBS)」施行を控え、経営者様から「うちは対象になるのか?」「何をしなければならないのか?」というお問い合わせが急増しています。

本記事では、最新のガイドライン案に基づき、貴社が「義務設置」なのか、「任意(認定制度)」の対象なのかを判定するための基準を分かりやすく解説します。

目次

貴社の立ち位置をチェック

2026年の制度開始に向け、すべての「こどもと接する事業者」は、まず自社が法的にどのポジションにいるかを確認しなければなりません。

なぜなら、『義務』『任意』かによって、経営者が負うべき法的責任と、現場の事務負担が劇的に変わるからです。

特に注意すべきは、任意(認定制度)の対象となる民間事業者です。
この制度が始まると、『認定マークの有無』が保護者にとって施設を選ぶ際の『最低限の安全基準』になる可能性があります。

もし、認定を受けられる要件を満たしているのに申請しない場合、保護者からは『性犯罪チェックを避けているのではないか』『安全対策にコストをかけない方針なのか』といった、ネガティブな推測を招くリスクがあります。

また、現時点の要件(1人経営やオンライン塾など)によって『認定を受けたくても受けられない』事業者の場合も、『国が認める安全基準を満たせない枠組み』に分類されてしまうため、独自に高い安全性を証明し、情報発信していかない限り、相対的に『安全対策が不十分』と判断され、競合他社に顧客が流出する経営的リスクを孕んでいるのです。

① 「義務設置」:法律で「照会」が強制される施設

学校教育法や児童福祉法などで規定されている施設です。
これらは「公的な立場」として、制度利用が強制されます。

学校行教育法関係

  • 幼稚園
  • 小学校
  • 中学校
  • 義務教育学校(小中一貫校)
  • 高等学校
  • 中等教育学校(中高一貫校)
  • 特別支援学校
  • 高等専門学校(高専)
  • 専修学校(高等専修学校)
    ※18歳未満のこどもが在籍する課程を持つものが含まれます。

※大学も含まれますが、本法の対象は「こども(18歳未満)」と接する機会があるかどうかが実務上の判断基準となります。

認定こども園関係

  • 幼保連携型認定こども園
  • 幼稚園型認定こども園、保育所型認定こども園、地方裁量型認定こども園

児童福祉法関係

  • 児童相談所(一時保護施設を含む。)
  • 指定障害児入所施設等
  • 乳児院
  • 母子生活支援施設
  • 保育所
  • 児童館
  • 児童養護施設
  • 指定障害児入所施設以外の障害児入所施設
  • 児童心理治療施設
  • 児童自立支援施設
  • 指定障害児通所支援事業
    (児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援)
  • 乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)
  • 家庭的保育事業等
    (家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業または事業所内保育事業)
  • 登録一時保護委託者

これら義務設置に該当する施設は、施行と同時に『全職員(現職者含む)』の管理体制を整える法的責任を負います。
万が一、犯罪歴のある職員の配置転換を怠った場合、行政処分や公表の対象となるため、早い段階からの『対象職員のリサーチ』と『就業規則の見直し』に着手する必要があります。

② 【認定制度】信頼を証明する「任意」の民間事業者

民間事業者が「認定」を受けることができる事業は、法律で厳密に定められています。
貴社の事業が以下のリストに含まれているかご確認ください。

教育関係(学校教育に類する事業など)

学校教育に準ずる公的な性質を持つものから、一般的な習い事まで幅広く含まれます。

  • 専修学校(一般課程)・各種学校(18歳未満を主に対象とするもの)
  • 高等課程類似教育事業
    (海技士教育(本科)、普通職業訓練(18歳未満対象)、陸上自衛隊高騰工科学校など)
  • 民間教育事業
    (学習塾、スポーツクラブ、文化教室(ピアノ・英会話等))

児童福祉関係(地域の子育て支援事業など)

認可保育所以外の、より地域に密着した支援事業が対象となります。

  • 認可外保育事業(届出を行っているベビーホテルや事業内保育など)
  • 放課後児童健全育成事業等(いわゆる「学童保育」)
  • 一時預かり・病児保育・子育て短期支援(冠婚葬祭や病気の際に子どもを預かる事業)
  • ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)
  • 指定障害児通所支援事業以外の児童発達支援事業
  • その他(意見表明等支援事業、妊婦等生活援助事業、児童育成支援拠点事業など)

障害児・障害福祉サービス関係

障がいを持つこどもたちをサポートする事業も、認定の枠組みに入っています。

  • 障害福祉サービス事業
    (居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所(ショートステイ)など、こどもに対して行われるもの)

【重要】認定を受けるための「6つの要件」

児童等に対して教育、保育等を提供する事業においては、

・支配性:先生と生徒など、拒絶しにくい拒絶しにくい心理的関係がある
・継続性:密接な人間関係が長期間続く(手なずけのリスク)
・閉鎖性:保護者の目が届かない、二人きりになりやすい環境

等により、児童等と特別な社会的接触の関係を持つことから、児童等に対する性暴力の発生に特別の注意を払う事が求められています。
そのため、認定を受けるには、この注意しなければならない事柄に対して、以下の要件を見たさなければなりません。

①犯罪事実確認を適切に実施するための体制の整備
②早期把握の実施

③相談の実施
④児童対象性暴力等対処規程の作成
⑤研修の実施
⑥情報管理措置の実施

※詳細については、別の記事にて解説を行います。

③ 【要確認】現時点での対象外・判断が分かれるケース

「うちは短期教室だから」「オンラインだから」とすぐに安心するのは禁物です。
今回の制度では、表面上の形式ではなく、「こどもとの接触の実態」が重視されます。

「単発」と「反復」の境界線(短期事業の注意点)

「標準修業期間6か月」という基準がありますが、以下のようなケースは「継続性あり」とみなされ、認定の対象に含まれる可能性が高くなります。

季節ごとの反復開催: 夏休み、冬休み、春休みと定期的に開催される短期スクールなど
・通年事業の一部: 普段は通年コースを運営しており、その一環として開催される短期講習
・会員制のイベント: 登録している会員向けに、断続的であっても繰り返しイベントを行う場合。

逆に、「今回限りの記念ワークショップ」や、「再開の予定がない完全な単発イベント」などは、現時点では対象外となる見込みです。

物理的な接触がない「オンライン専門事業」

講師とこどもが同じ空間にいないため、今回の法律が防ごうとする「物理的な性暴力」のリスクが低いと判断され、現在は認定の対象外となっています。
※ただし、対面指導とオンラインを併用している場合は、対面部分において認定が必要になる可能性があります。

「組織性」が担保できない個人事業

1人経営の個人塾・教室
先生が自分自身の犯罪歴をチェック(照会)することは仕組み上不可能なため、対象外となります。
家庭教師・ベビーシッター
派遣元を通さない個人契約の場合、指導場所が「家庭内(密室)」となり、組織的な監督が届かないため、現時点では制度の枠組みから外れています。

「対象外」に分類された事業者は、日本版DBSの認定マークを取得することができません。
これは言い換えれば、「国のお墨付きなしで、どうやって保護者に安全を証明するか」という課題を突きつけられている状態と言って良いでしょう。
しかし、認定を受けられないからといって放置するのではなく

・独自に「無犯罪証明書」を提出してもらう運用の構築
・防犯カメラの設置や、保護者による自由見学制度の導入
・独自の「安全管理ガイドライン」の策定と公表

上記のような「制度外の独自の安全基準」を構築することが、競合他社との最大の差別化になるのではないでしょうか。

まとめ

日本版DBS(こども性暴力防止法)の施行は、子どもに関わるすべての事業者にとって、これまでの運営体制を見直す大きな転換点となります。

特に、今回ご紹介した「3つのリスク特性(支配性・継続性・閉鎖性)」と、それを判定する「6つの要件」の考え方は、認定を受けられるかどうかを分ける極めて重要なポイントです。

「うちは短期の夏期講習があるけれど、認定対象になるのか?」「1人経営だけど、将来的に認定を受けたい場合はどう組織化すべきか?」といった、個別のケースについては非常に複雑な判断が必要となります。

当事務所では、最新の法改正情報に基づき、貴社の事業がどの区分に該当するか、また認定を受けるために必要な「規約の整備」や「社内体制の構築」をトータルでサポートしております。

制度が始まってから慌てるのではなく、今のうちから「こどもにとって、どこよりも安全な場所」であることを証明する準備を始めませんか?

日本版DBSへの対応や、社内規程の診断に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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