日本版DBSの対象となる「民間教育保育等事業」の具体例とは?

目次

はじめに

2026年(令和8年)の「日本版DBS(こども性暴力防止法)」施行に向けて、実務上の準備が本格化しています。

当サイトではこれまで、制度の全体像や、義務・認定対象の切り分け確認対象となるスタッフの範囲、さらには不適切事案への対応について詳しく解説してきました。

ここで改めて事業者の皆様が直面するのが、「自社の事業は、ガイドライン上のどの民間教育保育等事業に該当するのか?」という部分かと思います。

日本版DBSにおいて、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者が認定を受けるためには、本制度に規定されている特定の事業に合致している必要があります。

今回は、こども家庭庁が公表した「ガイドライン」に基づき、対象となる施設・事業の基本的な考え方から、5つのカテゴリーにわたる具体的事業の範囲までを詳しく紐解いていきます。
自社が認定制度の「土俵」にあるかどうかを正確に把握するためのガイドとして、お読みいただければ幸いです。


対象となる施設・事業の考え方 ―認定の判断基準となる3つの要素―

民間教育保育等事業者に該当するかどうかは、その事業が児童に対する性暴力のリスクが生じやすい環境にあるかという観点から、以下の3つの要素を総合的に判断することとされています。

支配性(児童に対する力関係)

事業者やスタッフが、児童に対して指導や教育を行う立場にあり、児童を支配・指導する心理的・物理的な関係性があるかどうか。

ポイント
師弟関係や指導的立場にあることで、児童が拒絶しにくい状況が生まれる可能性を考慮します。

継続性(関係の維持)

その事業が一定期間にわたり、反復・継続して行われるものであるかどうか。

ポイント
スタッフの範囲の記事でも触れた通り、長期的な関わりの中で信頼関係が悪用されるリスクを想定しています。
そのため、単発のイベントなどは原則として含まれません。

閉鎖性(外部からの視線)

事業が行われる場所が、周囲から遮断された空間(密室等)であったり、外部の目が届きにくい状況にあるかどうか。

ポイント
個別指導室や更衣室、送迎バスなど、第三者の介入が難しい「閉鎖的な環境」が業務に含まれるかどうかが重要視されます。


民間教育保育等事業者の対象となる事業

では、具体的にどのような事業者が、認定の対象となるのでしょうか。
ガイドラインでは、対象を大きく3つのグループに分けて考えています。

教育関係

  • 専修学校(一般家庭)
  • 各種学校における児童等を専ら対象とする学校教育に類する教育を行う事業
  • 高等課程類似教育事業
    (海技士教育課海技課程、普通課程の普通職業訓練、陸上自衛隊高等工科学校における教育課程)
  • 民間教育事業

児童福祉関係

  • 指定障害児通所支援事業以外の児童発達支援事業
  • 児童自立生活援助事業
  • 放課後児童健全育成事業等
  • 子育て短期支援事業
  • 一時預かり事業
  • 小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)
  • 病児保育事業
  • 意見表明等支援事業
  • 妊婦等生活援助事業
  • 児童育成支援拠点事業
  • 認可外保育事業

障害福祉サービス関係

  • 指定障害福祉サービス事業
    (居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所または重度障害者等包括支援)

認定の対象外となる事業活動の具体例

今挙げた「民間教育保育等事業者の対象となる事業」の3つのグループに該当しそうな事業でも、「支配性」「継続性」「閉鎖性」の観点から考えて、認定を受けることができない事業もあります。

支援拠点(場所)の提供や、当事者同士の交流が主な目的であるもの

教育・保育等を直接提供することではなく、「場所の提供」や「当事者間の交流」が主目的である場合は、対象となる事業には該当しません。

環境的な側面によるもの

専ら保護者がいる環境での教育や保育を提供するものは、対象となる事業には該当しません。

マッチング・連絡調整が主目的であるもの

会員間のマッチング・連絡調整を行うものであり、教育・保育等を提供する事業ではないため、対象となりません。

里親

事業者ではなく、個人として自宅で児童を養育する立場であるため、対象とはなりません。


民間教育保育等事業に該当する具体的事業

ガイドラインでは、特に多様な形態が想定される以下の5つの事業について、詳細な区分と認定要件を定めています。

①専修学校(一般課程)・各種学校による学校教育に類する事業

各種学校などのうち、幼稚園から高校までの課程に相当する教育を行うものが対象です。

対象の具体例

  • 看護師養成所、調理師養成施設、製菓衛生士養成施設(専修学校・各種学校の指定を受けているもの)
  • いわゆる「外国人学校」で、幼・小・中・高に相当する課程を持つもの

注意点

認可を受けていないものや、自動車教習所などは、次に解説する「民間教育事業」に分類されます。

②民間教育事業

民間教育事業とは、いわゆる学習塾、スポーツクラブ、ダンススクール、フリースクールなど、法律上の明確な定義がない事業になります。
認定を受けるには、「支配性」「継続性」「閉鎖性」の観点も踏まえ、以下の5つの要件すべてを満たす必要があります。

1.児童等に対して技芸又は知識の教授を行う事業であること

  • 目的と実態
    児童等に対して技芸・知識を教えることを目的として明示されており、かつ実際に教えている(又は予定がある)こと(実態として児童等がおらず、受入れ予定もない事業は対象外)
  • 対象範囲
    大人・児童両方が対象の事業は含まれますが、大人のみが対象の事業に児童が例外的に参加しているものは対象外です。
  • 目的の範囲
    主たる目的である必要はなく、例えば「こども食堂における学習支援」「芸能事務所におけるダンス指導」など事業の中で行っているものも対象に含まれます。

2.当該技芸又は知識を習得するための標準的な修業期間が6月以上であること

継続性の観点から、以下の3点をすべて満たす必要があります。

  • 6カ月以上の期間にわたって事業を実施していること
  • その期間に複数回、教授を行っていること
  • 同一の児童等が複数回参加することが可能であること
対象となる例
  • 月1回、週2回など定期的に事業を実施し、同一の児童等が継続的に教授を受けることを想定している場合
  • 1~2か月に1回、体験学習プログラムを開催し、かつ同一の児童等が複数回参加することが可能である場合
  • 夏休みに1泊2日のキャンプを行い、冬休みにスキー合宿を実施するなど、一連のプログラムとして年内に複数回事業を実施し、かつ同一の児童等が複数回参加することが可能である場合
  • 小学校4年生から6年生までの3年間のプログラムで、毎年1回、1泊2日のキャンプを定期的に開催し、かつ同一の児童等が複数回参加することが可能である場合
対象とならない例
  • 7月に1回2時間、12 月に1回2時間のみ、それぞれ独立した別の学習プログラムを実施している場合

3.児童等に対して対面による指導を行うものであること

児童と直接接する環境であることが求められます。
そのため、対面による指導が一切行われず、オンラインでのみ教授を行う事業は対象外となります。
ただし、オンラインを基本としつつも、児童等の要望に応じて、対面による指導を行うことがある事業であれば対象となります。

4.事業者が用意する場所(事業所等)において指導を行うものであること

支配性・閉鎖性の観点から設けられた要件となります。
事業者が指定した場所の場合、性暴力が発見されにくい環境を生み出しやすいと考えられますが、児童等の自宅の場合は、仮に事業者が指定をした場合であっても、保護者等による一定の関与・介入が可能であり、性暴力等を行われやすい環境とは言い難いと考えられます。

対象となる例
  • 事業者のオフィス、従事者の自宅、カフェ、公民館等の個室、公園、山、海等
    ※家庭教師事業については、児童等の自宅以外の場所(教室やシェアオフィス等)でも教える場合があれば、対象とする。
対象とならない例
  • 児童等の自宅、保護者が指定した場所・区画

5.技芸又は知識の教授を行う者の人数が、政令で定める人数以上であること

「技芸又は知識の教授を行う者の人数」が3人以上の場合に対象となります。
この人数には、派遣労働者、ボランティアなど、雇用の有無や形態を問わず、実態として教授する業務に従事している者が含まれます。

③放課後児童健全育成事業等

放課後児童健全育成事業は、保護者が仕事などにより昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものです。
放課後児童健全育成事業(いわゆる学童保育)に加え、それに類する事業も対象となります。
具体的には、「地域学校協働活動」のうち、以下の3条件を満たすものが該当します。

  • 時間:学校の始業前や終業後に行われるもの
  • 場所:学校や公民館等の施設を活用するもの
  • 内容:学習・遊びの機会や生活支援の提供を行う事業
    (例:放課後こども教室、地域未来塾など)

実施場所についてガイドラインでは、学校施設や社会教育施設のほか、地方公共団体が設置する公共施設(公園、廃校施設、文化ホール等)や、それに類する施設(私立大学、寺院、民家等)も広く想定されています。

④認可外保育事業に該当するベビーシッターのマッチングサイト運営者等

ここでは、特に「個人のベビーシッター」「サイト運営者」切り分けが重要です。

個人のベビーシッターが単独で活動している場合は、本制度の対象外となります。
しかし、マッチングサイトを運営する事業者が以下の条件を満たす場合は、「認可外保育事業」として認定の対象となります。

認定の対象となる条件
1.運営者が登録シッターと委託契約を締結していること
2.運営者自らが、自らが保育の提供事業者となること
3.関連指針の改正に基づき、運営者が自治体へ「認可外保育施設」としての届出を行っていること

家庭教師の派遣事業についても、 家庭教師派遣事業者が個人講師と委託契約を結び、前述の「②民間教育事業」の5要件(3名以上、対面、場所指定等)を満たす場合も、民間教育事業として認定の対象となります。

⑤障害児に対する指定障害福祉サービス事業

障害者総合支援法に規定する事業のうち、障害児に対して行う「居宅介護」「同行援護」「行動援護」「短期入所」「重度障碍者等包括支援」を行うものを認定対象としています。
ただし、これらは障害児のみならず障害者にもサービスが提供されるものであるため、都道府県等への指定申請や届出における「利用する障害児の推定数」によって事業者を特定し、認定対象として判断されます。


まとめ

今回の記事では、日本版DBSの認定を申請できる「民間教育保育等事業」の具体的な範囲を整理しました。

仙台・宮城の事業者様へ
自社の事業が「5つの要件」を満たしているか、認定を受けられる体制にあるかなど、仙台・宮城県内での申請実務に関するご相談を承っております。
気になることがあれば、いつでもeffor行政書士事務所まで、ご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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